チェルシーフラワーショーへ挑戦。庭を再定義し、機能性とデザイン性の高いガーデンを追求

和歌山県でガーデンデザインを請け負うHIRO.LONDON、3Dパース製作を請け負う株式会社HIRO GARDENING。二つの代表を務める田邑嘉浩氏のガーデンアート、空間デザイン、そしてチェルシーフラワーショーに挑戦するきっかけなど「ガーデン・庭を人々に伝えるため」の取り組みを、PR/マーケテイング担当の中村友彦氏にお聞きしました。

RIK
 創業はいつ頃なんでしょうか?
中村
和歌山からもほど近い大阪の岸和田市は植木の町です。その岸和田市で弊社の田邑が庭木の剪定を学び、2010年に独立して和歌山で創業。
2012年に外構のデザイン・施工も手掛けるようになりました。現在はデザイン業に重きを置きたいということで施工は協力業者と提携しております。また、個人邸の受注は受けず全て法人の受注となっています。 
RIK
 なぜ取引先を法人のみにしているのでしょうか?
中村
一言でいうと“作りたい庭と作れる庭の差が大きいから”です。外構は家を建てたあと予算を考えることが多く後回しにされがちな現状があります。個人邸にデザインの要素はそんなに求められていないのが現実的なところです。
庭は生活の一部なのでより機能的でより利便性の高いものを求められるのは当然なのですが、人に見てもらいガーデンを通じて感性を豊かにする喜びを感じてもらいたい田邑にとって、デザイン要素を入れられないガーデンは少し物足りないものでした。法人のガーデンの場合は予算採りの時点から関われるので、作りたいもの、伝えたいものが形にしやすいという点があります。 
RIK
 チェルシーフラワーショーへの出場が決まっているそうですが、世界一のショーへ挑戦する理由とは?
中村
2017年に国際バラとガーデニングショーに出場してありがたいことに賞を受賞しました。ですがその後、国際バラとガーデニングショー自体がなくなってしまい…。世界一の大会へ挑戦してみたいという想いもあり、2017年から挑戦しはじめました。まず審査を通過するのがとても大変で、世界中2000社以上の応募のなかから選抜されるだけでなく、図面はもちろん提出書類もすべてビジネス英語で提出が必要です。弊社にはそのようなスキルのある人材がおりませんので代理人や通訳と契約し…。
三度目の挑戦で審査通過したのが2019年のことです。ただ出場権は得たものの、新型コロナウィルスの影響で2020年の開催が延期に。2021年5月の開催予定がさらに9月に再延期されました。そのなかで、足元の新型コロナウイルス蔓延状況などを大会関係者と協議・勘案し、2022年の5月に出展について英国本部より正式文書をいただき出場が決定しました。思いもかけないことで再延期になりましたが、あと1年準備期間が得られたと前向きにとらえています。

▲国際バラとガーデニングショー出場作品 MyGarden賞他2部門にて受賞


▲チェルシーフラワーショー出場予定作品のイメージパース

RIK
 来年の5月の出場が決定しているんですね!チェルシーフラワーショーに出場することでどのような影響がありそうですか?
中村
チェルシーフラワーショーが開催されるイギリスでの事業活動が可能となります。デザイン業務は通訳さえいれば成立するので、海外での受注も受けられることになります。イギリスでは手描きスケッチなどでの提案も多く、弊社の3Dパース製作部門も海外からの案件を受注できるようになれば新たな展開として面白い、というのもあります。
海外への販路拡大という目的もあるんですが、世界一のショーを経験することで弊社田邑のガーデンアートを日本でもたくさんの方に見てもらえることになります。また和歌山のもの、地場のモノを海外に打ち出したいという想いもあります。たとえば根来塗という…
RIK
根来塗とはなんでしょう?
中村
漆塗りの器です。高野山に弘法大師が伝えたもので、そこから輪島塗などに発展していきました。日本の漆器の元祖なんですが、輪島塗ほど知名度がなく…。根来寺の中に工房を持たれている女性の方がいらっしゃって。チェルシーフラワーショーで作庭するガーデンの中に休憩スペースを設け漆器でお茶してもらう、そのために根来塗を発注しています
RIK
チェルシーフラワーショーでつくるガーデンのためにオリジナルの漆器を作るということですか!?

中村
そうです。「過ごす」こともガーデンの醍醐味だと思っていますので。根来塗や備長炭などの和歌山の文化を海外に伝えるためのプロジェクトとしても大きな意味を持っています。地元の企業さんから協賛いただいたり、弊社は和歌山県の紀の川市に本社があるのですが、紀の川市もチェルシーフラワーショーへの出展を全面的に応援してくれています。
RIK
 出展することで多岐にわたる様々な相乗効果がありそうですね。ショーへの出展以外にもなにか取り組みをされているそうで…
中村
代表の田邑は絵も描いていることもあり東京・表参道のギャラリーで個展を計画中です。ガーデンデザインとアートを組み合わせて、ガーデンの面白さやデザイン性を感じてほしいと思います
RIK
ガーデンデザインとアートの融合ということでいえば、施工事例もかなりデザイン性が高いですよね。見たことないような事例でとても驚きました。台座の上に植栽がしてあるんですね。
中村
こちらは紀の川市の病院ですね。地域の金属加工工場に台を発注し、ステンレス製植栽テーブルを製作して植栽しました。庭がある場所は6階までの吹き抜け部分に位置するので、どこからみても違う表情に見るようにというデザインコンセプトのひとつです。立ったまま植物に触れられるように、より自分の目線の近くで楽しめるようにこのような設計にしてあります。

▲公立那賀病院に施工したガーデンアート

中村
その流れを汲んで同じようにステンレス製植栽テーブルを使用して植栽したケアハウスの事例です。お年寄りが車椅子に座ったままガーデニングができる、土いじ
りができちょうどよい目線に植物が見えるデザインです。ガーデンセラピーの要素を取り入れています。今、進行中のプロジェクトでリハビリ施設があり、そちらはリハビリ歩行しながらガーデンと触れ合いが可能になるようなデザインになる予定です。

▲社会福祉法人篤眞会に施工したケアハウス向けの工夫を凝らしたガーデン

RIK
 デザインのテーマとしてはユニバーサルデザインが大きいのでしょうか。
中村
そうですね。田邑は「庭を再定義する」ということをよく言っているのですが、自然の素晴らしさを知っていただける庭、人にも環境にもやさしいユニバーサルデザインの考え方にもとづいた機能性とデザイン性を共存させたガーデンアートをお伝えしたい、と
地球環境にやさしいものをというのはチェルシーフラワーショーに出展する材料にもこだわっていて、再利用の木(ハードウッド)を加工したものを使ってなるべく「自然に帰るもの」を使用するなどしています。
RIK
今後の展開が非常に楽しみです。
中村
とりあえずはチェルシーフラワーショーに出展することと、病院やケアハウスだけではなく公園や室内空間まで内外問わずデザインをてがけていきたいですね。まだまだ、庭に重きをおく方は多くないと思うので、アートを通じた個展などを開催することで庭を好きになってくれる間口を広げ、人とガーデンを繋げていくことが我々にできればと思っています。3Dパース作製の方でもエクステリア以外のパース製作に販路開拓もしていくなど、新しいことを常に追い求める企業でありたいと思っています

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