嗜好と思考を整理し、人の暮らしをアップデートするアップデーター・はらむらようこさん

“「好き」から始める暮らしの片づけ”の著者・はらむらようこさん。出版パーティーに参加した時、あまりに素敵なはらむらさんの言葉に夢中になりました。と、いうのもはらむらさんはご自身を「人の暮らしをアップデートするアップデーターだ」とおっしゃっていて。整理収納アドバイザーのように「片づけ」だけではなくファッション・生活空間・時間の過ごし方などライフスタイルそのものをアップデートするガイドのような役割だ、と。お客様とともに本質を深掘りし、よりそいながら暮らしをアップデートしていく、はらむらようこさんにインタビューしました。

RIK
はらむらさんはもともと、インテリア雑貨の企画開発のお仕事をされていたんですよね。

はらむら
インテリア雑貨の企画・開発ディレクターをしていました。キッチンマットやバスマットを担当していました。妊娠した時にトラブルがあって仕事をセーブするようにお医者にいわれて泣く泣く退職しました。金銭的なこともですが、自分のアイデンティティのためにも仕事はしたいと思っていました。でも子供を産んでから3年間は楽しく専業主婦をしていました 。働かなきゃとはおもっていたんですけど特にコレと言った仕事も見つからず…。でもその間にママ友をいっぱい作ったんです。そしたらママ友に色々相談される機会が多くなって。 
RIK
相談というのはインテリアのことについてですか?はらむらさんの前職をご存知だったから相談が多くなったのでしょうか? 
はらむら
前職がインテリア関連だったからというよりは私個人を見て相談してくれた感じだと思います。『どういうところで服買ってるの』とか『家をなんとか素敵にしたいんだけど、どうしたらいい?』とか。ファッションからインテリア、家事のことまで聞かれる機会が多くて相談に乗っているうちに「起業しよう」と思った、あるキッカケになったことがあって。
RIK
起業しようと決意されたきっかけですね。 
はらむら
あるママ友に「ダイニングテーブルを買い替えたいから、いい店教えて」と言われたんです。彼女がどんなテイストが好きかわからなかったから「どんなテイストが好みなの?」ってきいたら「そんなのわからない」と。「とにかくオシャレなやつがいい」と言うんですね。
RIK
かなり漠然としていますね。 
はらむら
私は芸大出身で、自分のスタイルを確立している人たちが自然と周囲にいたので気づかなかったですし、さらに大衆向けのデザインをしていたからモニターでたくさん調査したつもりだったんです。けれど“子どもの年が同じ”という共通項しかない女性達と知り合って「デザインというのは生活に全然行き届いてないんだ」と初めて感じました。じゃあテイストではなく違う角度から聞いてみようと思って“今のダイニングテーブルのなにが嫌なのか”を聞いたら「別に嫌じゃないけど小さく感じるしもっと広々使えそうなものに買い替えたい」と欲望が曖昧なんですね。お宅に伺ったらそのダイニングテーブルの上に雑然と物が置かれていたりテーブルのそばに食器棚があるので狭く感じられたり、要はダイニングテーブルが気に入らないんじゃなくてその空間が嫌になっていただけなんですね。それで一番占有面積が大きいダイニングテーブルのせいなんだ、と思い込んでいたんです。
RIK
それで結局、ダイニングテーブルは買い替えたんでしょうか。 
はらむら
結果的にはダイニングテーブルは買い替えず、食器棚を整理したり向きを変えたりして空間をデザインし直しました。すると、彼女はその空間を気に入って一件落着しました


シンプルだけど温かみのあるはらむらさんの自宅

RIK
「なにか気に入らない」の根本原因は空間づくりとテーブルに物を置いてしまう悪習慣、という感じだったんですね。 
はらむら
「 嗜好と思考の整理」と私は呼んでいるんですが、その整理ができない人が多いんですね。自分が本当はどんなものが好きか見直すことと思考回路を整理する必要があると思うんです。「ダイニングテーブルが嫌だ」の前にダイニングテーブルを取り巻く物理的な現象を見れていない場合が多いので、ダイニングテーブルでなにがしたいのか、ダイニングテーブルのある空間でどう過ごしたいのか、自身の生活パターンも実は把握出来ていなかったりという場合もあるのでそれをもっと客観的に知らせてあげたい、と思いました。「生活をよくしたい」と思っている人にもっとしてあげたいことがあるし、やれるはずと思って起業にいたりました。 
RIK
起業しよう!と決めて、まずどういうアクションを起こされたんでしょうか。 
はらむら
いくら仲良しのママ友でも相談されて「まずは家を片づけたら?」とは言いにくかったんですよね。そんな事もあって整理収納アドバイザーの資格を取ったら「片付けたいな」と思っている人が相談してくれるわけだから「じゃあ片づけよう」というのも言いやすいし、片付けだけじゃなくてその人の好きな空間づくりまでやれるんじゃないかと思って資格を取得して、子供が幼稚園にあがるタイミングで起業しました。 
RIK
はらむらさんのご自宅もものすごく物が少ないように思いますがやはり断捨離など、余計なものを捨てることに重きを置くのですか? 

はらむら
私は無理して捨てて物を少なくして片付けるのはナンセンスだと思っているので、断捨離を推奨する気はありません。「本当に好きで大事にしたいもの」だけを手元において「その人にとってゴールドの価値があるもの」を自分で選択して大事にしてほしいと思っています。イメージ的には家中の全てのものを「売り手は私、買い手も私」のマーケットに出す、というイメージです。家中のものを買った当時の購入価格でもう一度購入したいかどうかで見定めていきます。家中のものを客観的に見直す作業ですね。「今の自分にとって大切なものとだけ暮らす」という価値観です。その結果、物が減っていた、という場合が多いんです。逆に言うと「本当はそんなに好きじゃない」ものと暮らしている場合がほとんど、ということです。
RIK
お客様の嗜好と思考の整理をするにはお客様の本質を深掘りすることからはじめると思うのですが、その考え方にすぐ慣れてくれるものなのでしょうか? 
はらむら
慣れるまで時間はかかります。でも、習慣化していくんです。ライザップみたいな感じですね。生活のアップデートは、ダイエットに似ているんですよね。一回や二回運動したからって痩せないですよね。生活も一回や二回、片づけたところで変わらないです。ダイエットと同じで何が悪いのか、根本原因は何なのかというのを明らかにする必要があります。部屋の片づけだけじゃなくて、お客様の時間の片付けもするんです。今、現在どういう風に暮らしているのか、どういう風に暮らしたいのか、生活時間の改善点を見出していく場合もありますね。他にも10年ごとのライフプランを書いてもらって、生活の先に求めるものも共有しあいます。その時、注意しているのが「大きい目標を入れないで」っていうこと。特に女性は「どういう女性になりたいですか?」って聞くと母として、妻として、そして仕事もバッチリこなして…というスーパーウーマンを目指そうとするんですが、それは間違い。今の自分の本質を探ることが目的なので、大きすぎる目標は逆効果になります

 

まだまだ続く、アップデーター・はらむらようこさんのおはなし。次のページへ