三浦 祐成氏の2020年以降の住宅産業“最新予測” レポート

2018年11月29日に開催されたリックスクエア「2020年以降に求められる住宅・エクステリアの価値の作り方」の第一部・株式会社新建新聞社代表取締役の三浦 祐成 氏による「2020年以降の住宅産業“最新予測”」のセミナーレポートをお届けします。


・アンダー1,000万住宅などローコスト住宅の台頭


ローコスト住宅流行の背景にはやはり給与の手取りが減っている現状があります。それに加え、スマホの影響・スマホ中毒による家での家族の団らんの低下も関係していると三浦氏は指摘していました。さらに週末を家で過ごさずイオンなど商業施設で時間を潰す「イオニスト」が増えていることも原因なのでは?と。家で心地よく過ごす・家で団らんすることの価値が落ちているのではないか、と推察。


・ジェネリック化(代替手段)が起きている世の中
・デジカメは⇒スマホで代替されるようになり、
・新品の物品は⇒メルカリ(中古)で代替され、
・注文住宅は⇒企画住宅で代替されるような世の中になってきました。


・競合がひしめきあうレッドオーシャンでは相変わらずの価格競争


コスト競争・過剰なサービス競争はとどまることがなく、どんどん疲弊していっているのが住宅業界の現状です。利益の下げあい・たたき合いから抜け出すには「デザイン・価値」が必要不可欠です。

その例としてiPhoneを挙げていました。スマホ業界の激しい競争から抜け出したiPhone。高級品になることで競争から抜け出しました。シェアでいえば2割程度のシェアしかないそうなのです。しかし利益は90%台。売り上げ(シェア)より実利を優先し、ブランディングも成功させました。


・競合ひしめくレッドオーシャンから抜け出すには?
レインボーオーシャンを目指すべきだそうです。虹(レインボー)は見える人には見える、角度によっては見えないもの。潜在した、隠れた需要に気づくか気づかないかの市場である、と三浦氏。


画像出典元:BESS

例としてアウトドアハウスで人気ブランドとなった「BESS」を挙げていました。「住むより楽しむ」というBESSの秀逸なキャッチコピー。家で過ごす時間の価値を高め、家が楽しい場所になると自然と家にいるようになる、家が楽しくなると家族も仲良くなる、という住まう人のライフスタイルの質を高めることに成功しています。

BESSは「アウトドアという要素を取り入れて住宅を再定義した」と三浦氏。BESSは1,500万人いるアウトドアに興味がある潜在的需要に気づき、レインボーオーシャンに入ることができたのです。アウトドア市場は昔からずっとあったのに住宅業界ではBESS以外気づいていなかった。

元来ログハウスは山の中や自然の中で楽しむものとされてきていました。山にあるような本格的なまるで木こりが住むようなイメージのログハウスはすごくニッチで、本物のアウトドア好きしか手をだせないものだとみんな思い込んでいました。
BESSの素晴らしい点は「都市型ログハウス」という矛盾したカテゴライズをし、自ら新しいカテゴリを創造したとこにあると三浦氏。
「ちょっとだけ自然」「ちょっとだけスローライフ」はみんな興味があるし、取り入れたいと思っている人はとても多いですよね。キャンプに足しげく通うは多くなくても、ピクニックや自転車やランニング、SUV自動車に乗るなど「ちょっとアウトドア」を趣味にしている人は実に多いのです。BESSが見つけたまさにレインボーオーシャンでした。


・「住宅を再定義」「新たなカテゴリの創造」


画像出典元:ミサワホーム

たとえばミサワホームの蔵のある家。元来、蔵は家とは別の位置にあるものを家の中に取り入れることで「再定義」し新しいカテゴリをつくったことになります。アウトドアリビング・屋上リビングも、リビングは家の中にあるものという価値観を再定義しています。

その中で今注目なのが平屋。平屋の人気が高まっているそうです。ポーチライフ×平屋など、軒下を活かした新しい場所の再定義にも注目が集まっています。平屋のメリットは自然と街と一体化できること。住む場所と平屋の多様性が広がってきています。アメリカの平屋専門店アイクラーホームが提唱していたようなインドアとアウトドアの内外一体設計に需要が高まってきているそうです。


・2020年までにおきること
・止まらぬ着工数の低下
・住宅価格の値下げ
・深刻な大工・職人不足
・ローコスト住宅は売れるが作る人がいない事態に
・資材単価があがりローコストの限界がくる
・売上上がらず、原価が下がらないので儲けのない状態に
・中古住宅に伸び代の可能性

ブラックビルダーは疲弊の一途をたどると三浦氏は指摘します。働き方改革の施行により、残業の罰則規定もつくられます。人材が少ない中で残業をさせずに乗り越えるにはITツールをうまく使っていくことが求められます。ブラックビルダーはホワイトビルダー目指すこと。高品質・相応価格・適切な生産性が重要になります。
消費税が非課税の中古住宅は、インスペクションや安心R住宅制度の登場で今後もっと伸びると予測されます。野村総研の調べによると現在3割の人が中古住宅に住んでいるそうですが、2030年にはおよそ5割の人が中古住宅に住むのではないかと予測されています。リフォームやリノベーションにもやはり力を入れていくべきですね。