同じ商圏でもライバルではなく同志に!工務店の新たな可能性とは

新建ハウジング主催「工務店経営カンファレンス2019」Day.1では様々な特色、個性を活かしながら独自の路線で工務店経営を成功させている経営者や管理職の方が登壇していました。その中で気になった取り組みや動向などをレポートします。

株式会社サトウ工務店の佐藤高志氏の講演タイトルは「住学から広がる工務店の新たな可能性~同じ商圏でも“ライバル”ではなく“同士”に!」。株式会社サトウ工務店は社員数5名、施工数は新築6~8棟(年)、改築は2~3棟(年)の小さな工務店。自然に囲まれた新潟県三条市にあります。

サトウ工務店の家づくりのモットーは
・施主や建築士の好みや流行を取り入れた住まいにしない
・敷地の特長や個性を活かした形を住まいの個性にする
・長く住まうことを考えて流行を取り入れすぎない、建築物としての価値を持続させる
また標準仕様として耐震等級3、内装仕上げモイスを使用、耐力面材モイスを使用すること。

画像引用元 株式会社サトウ工務店

そんな家づくりにこだわりのあるサトウ工務店の佐藤氏が中心となって起こしたコミュニティが注目されています。その名も「住学(すがく)」=住いの学校。

主に新潟県内の工務店、設計事務所、建築士から構成されています。その他にもハウスメーカー、建材店、メディア、学生、一般の方々もメンバーにはいるようです。佐藤氏が発起人となりFacebookを中心にメンバーを募集しだしたのが2018年の2月頃。たった1年半でメンバーは180名(2019年7月現在)に!「住学」のなにが家づくりにかかわる人をひきつけたのでしょうか?

主な活動内容は
【本篇】2か月に一度の勉強会+懇親会
【番外編】現場見学会(不定期)
【部活動】構造部、テクノ部、石田部(専門的に学びたい人の活動)

この3つの構成で活動されているようです。本篇の勉強会は毎回、50~60人くらいの方が参加します。ゲストスピーカーを招くのではなく加入メンバーが順番にスピーカーを務めるそうです。メンバーが違う個性(得意技)を持っている、自分の持つスキルや情報を共有することで自身の振り返りにもなり、聞く側は身の丈にあった話で共感がしやすいことなど様々なメリットがあるそうです。


勉強会の後に開催される懇親会では、参加率はほぼ100%。懇親会を目当てに来る人も多いのだそうです。参加者は「スキルアップだけではなくつながりを求めて」参加しているのだそう。お酒が飲めても飲めなくても、肩の力を抜いてオープンに話せる社交場はとても大事で、有意義な場になるのだとか。

【番外編】の現場見学会は完成及び施工中の現場見学になるそうです。自社のノウハウや情報(金額面)を包み隠さず公開してもらうそうです。【部活動】は構造部(木造専門の設計士による講義)やテクノ部(パナソニックとの協業、商品開発など)、石田部(建築家・石田伸一氏によるマーケテイング入門)などそれぞれ専門性の高い活動になっています。

ここまで聞いていて気になってくるのは「同じ商圏にいるのにノウハウや情報を開示できるものなのか?ふつうはライバル会社にオープンにするのは気が引けるのでは」という疑問。

佐藤氏の唱える「同じ商圏の同業者がライバルにならない理由」はこうでした。

知らない会社だからライバル視してしまう、仲の良い会社ならば同志になれる。そのために懇親会などの力まずオープンに話す社交場が必要。仲間意識の生まれる大事さ。

・みんな個性があってみんな強みが違う。なんでもウリにできるオールマイティな会社の方が少ない。

・施主様が会社を選ぶのであって、施主様を取り合うこと自体がそもそもおかしい。施主様が他の会社を選んだとしてもそれは施主様とその会社の適正なマッチングである。

まとめとして佐藤氏は商圏のかぶる同業他社と“ライバル”ではなく“同志”となるメリットをこうまとめていました。

「ライバルには情報や技術を出し惜しみする=業界全体としてはマイナス。同志には情報や技術を共有できる、教えたくなる=業界全体のスキルアップ。またプロがプロを認め合うことで自社PRにもつながり営業的な効果も見えてくる。同士が増えれば増えるほど効果は大きく、共存共栄できることが最大のメリットだ」とおっしゃっていました。

安売りのたたき合いで戦う市場は疲弊するだけです。いがみ合う“ライバル”が称えあうことのできる“同志”になり、お互い切磋琢磨しあえるほど素晴らしいことはないですよね。綺麗事ではなく現に実践している「住学」の活動を聞くと新しい時代の到来を感じましたし、そこに踏み込んでいける柔軟性があってこその共存共栄なのだろうと思いました。