弓削牧場が目指す、美しき資源循環モデル


神戸市北区にある弓削牧場は閑静な住宅街のほど近くにあります。もともと牧場があった場所の周りにどんどん住宅街が広がったそう。神戸で大人気の牧場です。その人気の秘密は、牧場でつくられる絶品のチーズを筆頭としたオリジナルの製品。
有名ホテルでも取り扱われているみずみずしいフレッシュなチーズは一度食べたらやみつきになる美味しさ。そんな美味しい乳製品をつくる弓削牧場では、廃棄物でバイオガスユニットを通してエネルギーの再構築に取り組んでいます。エネルギーさえも地産地消を目指す、弓削牧場の魅力とは!

弓削牧場の牧場長、弓削忠生さん&和子さんご夫妻がチーズづくりを始めたのは今から35年以上も前。当時はチーズといえばプロセスチーズが主流。チーズづくりをしている牧場などは皆無の時代で、忠生さんは和子さんととともに文献を海外から取り寄せ独学でチーズ作りをスタート。
幾重の失敗を乗り越えて、試行錯誤の上生まれたのが現在の看板メニューでもある「フロマージュ・フレ」。当時は大変、珍しかったフレッシュなナチュラルチーズ。その食べ方や美味しさを知ってもらうために牧場内にレストランをオープン。1987年に「チーズハウス・ヤルゴイ」が誕生しました。



今から32年も前に地産地消の農場レストランを始めるなんて当時はかなり画期的だったでしょう。「チーズハウス ヤルゴイ」は口コミで広がり、日常的に牧場に人が訪れる起点となりました。

牧場内の敷地にはハウスで野菜やハーブなどが植えられてレストランで提供されています。「牧場がひとつのランドスケープなんです。植えている野菜やハーブ、木々、牛たちが草を食むその姿、ひとつひとつの要素がかさなりあって豊かな景観を生み出すのが牧場の良いところかなと思います。」と忠生さん。



ガーデンではウエディングパーティーが行われることも。植物や草花の植栽はご夫妻の長女・杏子さんの夫、庭師の篠原さんによるもの。六甲山や周辺に自生している植物を調査の上、植栽。自然的な里山の風景を作っています。

弓削牧場では2015年に、家畜の糞尿とレストランで出た野菜の切れ端や食べ残しを再利用したバイオガスユニットを導入しました。きっかけは牧場の裏手にあった山が削られたことにより風向きがかわり、牛フンの匂いが住宅街へ流れるようになってしまったことでした。
国内でバイオガスプラントを研究している帯広畜産大学と神戸大学大学院の共同研究という形で、小規模プラントを改良した独自の小型バイオガスユニットを導入。現在は野菜を育てるハウスを温めるために利用。次は乳牛の搾乳ロボットを動かすためのエネルギー供給を目的としているそうです。

画像引用元:KOBECCO

最終的には牧場内のすべてのエネルギーをまかなうことを目的として資源の循環を目指しているそうです。この話すごいですよね。いっさい無駄のない、廃棄物がエネルギーに代わるという美しいサイクル! さらにすごいのはこのバイオガスを生み出す時に副産物で「消化液」という液ができるのですがこの消化液、液肥になるんです。しかも弓削牧場の「消化液」は有機JAS資材認証を取得。目下、有機農家への販売を視野に実証実験中だそう。廃棄物がエネルギーになり無駄がなくなるどころか、その副産物で有機肥料が生まれて、また美味しい野菜が育つってなんという素晴らしい循環なんでしょう。

画像引用元:ローカルエコノミーのつくり方(学芸出版社)

弓削牧場の可愛いロゴ。これ実は、牧場長の弓削忠生と和子さんのお子さんたち。1985年当時の似顔絵だそう。

左から麻子さん、太郎さん、杏子さん。麻子さんと太郎さんは弓削牧場でチーズやスイーツの企画開発をされています。
長女の杏子さんは全米一住みたい街と言われている、オレゴン州ポートランド在住。弓削牧場では食やエネルギー事業の企画に携わっています。先月、ポートランド市長らが神戸を訪れ、経済やまちづくり、防災の交流促進に向けた覚書を結びました。その橋渡しの中心となったのが、オレゴン兵庫県人会の代表・コーディネーターとして活躍している杏子さん。神戸とポートランドを結ぶキーパーソンです。

画像引用元:神戸新聞Next

「神戸とポートランドはよく似ている」のだそう。港町で海と山が近く、都市部がありながら農業や漁業などもさかん。住宅地にある牧場で酪農やレストランを営む弓削牧場で育った杏子さんは「街に近い農業はどうあるべきか」という思いがあり、ポートランドの食と農に興味を持ったそう。まちづくりの先進的な街であるポートランド。神戸とポートランドがいい影響を与え合って、お互いが求める新しい経済をつくっていけると杏子さんは言います。

弓削牧場の進化する畜産モデルと、神戸とポートランドを結ぶ杏子さん。どちらも今後の活躍と展開がとっても楽しみです。神戸に住む私も、まちづくりが加速し(今でも充分に素敵な街だし、神戸大好き!神戸にずっと住んでいたいとは思っていますが)さらに居心地の良い街になることを願っているし、市民のひとりとして何かできることがあればしたい!と思います。