荻野寿也氏セミナー「庭から建築を考える」レポート【後編】

チリウヒーター主催の造園家の荻野寿也氏のセミナー「庭から建築を考える」に参加してきましたのでセミナーレポート、後編です。前編はこちら


・照明計画について

建物内部が明るすぎるとガラスの映り込みで夜の庭が全く見えない…ということになります。そのためには「庭にも照明を設置してある程度の明るさを持たせ、内と外とで明るさのバランスをとることが大事」と荻野氏。室内の明かりを調光できる照明にし、シーンに合わせて調整できると便利です。また注意しなければならないのはガラスに映りこまない位置に光源を設置すること。調光タイプでもガラスペンダントのような拡散型の器具は映り込みが顕著だそう。そして庭側の照明は樹木の下から光を当てるアッパーライトは下から映る影が不自然になるので避けた方がよいとのこと荻野氏はスポットライトを高い位置(建物の二階の軒など)に取り付けることが多いそう。理想は月あかり、中秋の名月のような光だそうです。上から外部空間を照らすメリットとしては夜にバーベキューなどをする際にも大変便利なこと。建物への配線が必要になってくるので、建築計画と同時に進めておく必要があります。


・開口は大きくなくてもよい

開放的な大開口が良しとされています。大開口は明るく開放的でメリットもたくさんあります。が、外部からの視線や陽光が入りすぎて暑いなどのデメリットもあります。地窓にして開口をぐっと絞るなどアイデア次第で、大開口でなくとも美しい佇まいの演出が可能です。重心を低くすることで静けさをもたらし心地のよい空間になります。


・文明の利器をうまく使う

画像出典元:東邦レオ
植栽を植えるにはまず土台となる土壌が大切です。もともと植栽に適した土壌があればいいですが、なければ人口土壌を使いましょう。保水性もよく優秀なものが販売されています。植栽を支柱で支えることによって美しい樹形に影響を与え、美観を損ないたくないので地下支柱を使うそうです。水やりはお施主様自身でしてもらい四季の変化や植栽の変化を楽しんでほしいと荻野氏はいいます。しかし水やりに最適な時刻に不在なことが多いなど施主のライフスタイルに合わせて、自走散水機を導入することもあるそう。「文明の利器をうまく使って、施主に無理させることなく維持管理していくのが一番大切だ」と荻野氏。


・「庭はいらない」という施主様の心を変えるには

「木や庭はいらない」という言葉の裏には「メンテナンスが面倒」と思っている施主様が多いからです。メンテナンスが面倒でなくなるように上記のような文明の利器を取り入れるのはもちろんのこと「メンテナンス、植物の剪定はすごく楽しいことであるということを伝えることが大事だ」と荻野氏は言います。「どう扱えばいいのかわからないからイヤになってしまう、ノウハウさえ知れば植物のメンテナンスはとても楽しいと思ってくれる方は多いと思う」と荻野氏。そのためにワークショップなどを開催して惜しまずノウハウを外に伝えるべき、と。また「木はいらない」と言われる施主様の心を動かすような緑と建築が一体となった実例も大切です。


・建築計画の段階で植栽の配置を意識してもらう

建築計画の段階で植栽配置を意識してもらうには「庭の理解を深める」ことが大事だといいます。この庭の理解とは端的にいうと「樹木のおおよその単価」「作庭にかかる人工代」「よく使う木の高さや根鉢の大きさ」を建築士にある程度理解してもらうこと。こちらも自分たちのノウハウをきちんと建築士や住宅の営業マンに伝えることが必要不可欠だそうです。


よく使う植栽

画像出典元:美興プランニング
高木なら、アオダモ⇒成長が遅くて虫がつきにくい。コナラ⇒西日に強く丈夫。アカマツ⇒成長をコントロールでき使い勝手がよい。山採りの木も使うことはあるが傾けたり不自然なしつらえにはしない。畑で生産されている端っこで育っているものなど樹形が面白いものを使うようにしている。竹は育ちすぎて管理が大変だし綺麗な期間が短いのでオススメはしない。しかしクロチクであれば5mほどで成長が止まり管理しやすい、とのこと。


 

荻野氏のセミナーレポート、いかがでしたでしょうか。荻野氏の庭づくりのメソッドや考え方が集約された著書「美しい住まいの庭 85のレシピ」も実例がたくさんのっていて、とてもわかりやすくてオススメです。