ゆとりとかさとりとか…ウンザリ!「わたし、定時で帰ります」世代のホンネ

CybozuDays osaka、二日目のセッション「「わたし、定時で帰ります。」原作者朱野帰子さんと語る。女性活躍?働き方改革?そうではない、若者のリアルとは」がとても興味深かったのでレポートします!

このセッションを企画したのはサイボウズで働く20代の女性2人。TBSで2019年に放映され話題となったドラマ「わたし、定時で帰ります。」の主人公・東山結衣にとても共感したといいます。「ゆとり世代・さとり世代と呼ばれて仕事に熱意がない」と言われることに違和感を常に抱えている20代のホンネと「わたし、定時で帰ります。」を執筆した背景を原作者の朱野帰子さんが語ります。

画像引用元:TBS

20代の女性2人が働く中で不満や疑問に感じていること。
・20代のうちにスキルを身につけキャリアを磨いておくべき!
・なぜなら30代に入ると結婚・出産を意識する
・出産後はどうしても働き方をセーブするだろう
・だけど世間的には「バリキャリ」か「ゆるキャリ」の二通りしかない
・バリキャリの女性は起業家!国際社会で活躍!とか上昇志向の強い女性像
・ゆるキャリの女性は「OLファッション」とか「OL作法」とかニコニコ可愛い職場の花の女性像
・バリキャリほど身を粉にして働いていなくても、私たちはゆるキャリじゃない
・仕事が大好きで懸命に働いているのにどこか熱意がないといわれてしまう

そんな20代の2人の女性へ、朱野帰子さんが「わたし、定時で帰ります。」の執筆背景を交えてアンサー。

朱野 帰子さん 1979年生まれ。小説家

作家になる前は会社員だったという朱野さん。
「ブラックぎみの会社で働いたこともありますが実はブラックな働き方をしていたのは作家として活動してからでした。徹夜は当たり前、無茶なスケジュールは当たり前。過労が溜まり入院をすることもありました。そんな時、新しく担当になった20代の編集者に「どうして仕事に命をかけてしまうんですか、私はそんな無茶なことに巻き込まれたくないです。」と言われたんです。その一言に腹も立ったし「カチン」ときました。こっちは命削って作品書いてんだ!と。でも世代によって仕事への取り組み方や価値観がこうも違うのかということに面白さを感じました。実は原作にでてくるブラックな価値観のキャラは私自身の分身のようなものなんです。主人公とは真逆の価値観でやってきましたから。
作品が話題となり、働き方に一石を投じたと絶賛されたことも想定外だったそうです。

朱野さん「ゆとり世代やさとり世代は決して怠け者じゃありません。働きたくないわけじゃない、どの世代よりもリソースマネージメントに長けているだけなのです。主人公の東山結衣は残業をせずに定時で「ビール飲みたいから帰ります」と帰るキャラなんです。だからといって彼女は怠け者ではありません。就業時間中は効率よく働くことを念頭において働いています。定時でとっとと帰っていると、仕事をほっぽって帰っているように見られてしまう。仕事が好きじゃないという前提になってしまうのはまだまだ現状としてあるんじゃないかなと思います。でもそれは偏見もいいところで、定時で帰っても帰らなくても怠け者のおっさんだっていっぱいいますよ!」

この話を聞いて「おお~!」と思ったのが朱野さんがおっしゃった「どの世代よりリソースマネージメントに長けている」という言葉。
サイボウズが独自に集計したアンケート(20代~30代前半の女性309人が対象)によると、仕事へのモチベーションとして当てはまる回答のトップが「人間関係のいい職場で働きたい」が66%、次に「プライベートが大事にできる環境で働きたい」が60%だったそうです。自分のリソース(基本性格や資質)を理解し、時間のリソースも仕事ばかりに割くのではなくプライベート時間を大事にする。「無理しない」ということがまさにリソースマネージメントに長けている点なんだろうなあと思います。

上の世代のような働き方をしたくない、という影響も大きいかもしれません。会社のために身を粉にして働いても業績次第ではクビになる、家庭を顧みず仕事人間として生きて家庭が崩壊した時、幸せだと言えるのか?仕事に全てのリソースを割く価値はない、と判断しているのがゆとり世代・さとり世代なのでしょう。

朱野さん「2人がおっしゃられたように働く女性像はバリキャリ・ゆるキャリの2つのイメージがまだ多いのかもしれませんね。主人公の東山結衣は短時間で利益を出すことに集中して、会社の利益、目標達成を意識している女性です。会社のミッションに合致している前提で、会社への貢献を一番に考えています。周囲のブラックな意識の社員への忖度などはしません。バリキャリでもゆるキャリでもなく、そのちょうど中間です。というか、世の中で働いている大多数の女性はこの中間層ですよね。新しい価値を選択している女性像が、この東山結衣という女性像だと思っています。」


このセッションを受講して思ったことは、この話はゆとり世代・さとり世代に限らず働く女性全てに関わってくることですよね。バリキャリ、ゆるキャリ。この二極化したイメージの女性なんて全体の数%でしょう。大多数の女性は朱野さんのお話のように中間層です。働き方改革やブラック組織の是正によって自らのリソースの使い道を考えなおす時が来ています。ゆとり世代やさとり世代のリソースマネージメントを見習うべきなのだろう、と思いました。