「体験したこと」は忘れない。「体験型イベント」が不可欠になってきているワケ

昨今、よくきく「体験型イベント」について電通の井口氏のブログに面白いことが書いてありましたので抜粋して紹介します。

昨今言われる「体験型イベント」とは何なのでしょうか。私たちPRパーソンにとっては、イベントは「メディアであり、またコンテンツである」と言えましょう。ちょっと解説しますね。

①メディア
イベントを通じて生活者にダイレクトに情報を手渡す、という段階では「イベント=メディア」です。

②コンテンツ
イベントの様子をマスメディアに載せて情報拡散する、という段階では「イベント=コンテンツ」となっているわけです。これがイベントのハイブリッド利用という形。しかし、ここにもう一つの要素が最近付加されているわけです。

③情報拡散
イベント後に、SNSなどソーシャルメディア上での情報拡散というフェーズがあります。つまり①に参加した生活者が自らのメディア(SNS)においてこれを発信し、これが拡散、また受信側の疑似体験をつくり出す、話題への共感を生み出すことにつながっていくわけです。

確かに友人や知人の「どこか行ったよ」「美味しいもの食べたよ」「こんなことしたよ」という発信を見る度に疑似体験、共感し「私もその体験をしてみたい」と思うこと多くなりましたよね。欲しいモノの情報を求める時ネットで検索して製品を売る側の情報も閲覧しますが、やはり「実際の購入者の口コミ」「レビュー」に重きを置きますよね。他者の口コミ・レビューを見ることはまさに「疑似体験」「共感」ですよね。

「企業の魅力度をどのような経路からの情報で感じま すか」という質問に対し、「番組や記事」「企業が直接発信する情報」などの「メディアを通じて」魅力を感じるのが54.4%となりました。われわれPR パーソンが普段活用する各種メディアを通じた情報発信がこれに寄与する、という結果かと思います。

しかし、一方で「商品・サービスを直接体験して」「社員・店員などを通して」といった「リアルな体験を通じて」魅力を感じるという生活者も 45.6%に上っているのです。これを見るに、情報戦のみならず生活者における「体験」が重要になってきており、そういった「直接の触れ合いの場」の見直 しがこれから進んでくるのではないかと思うのです

昔は「大手メーカー」のモノが最上という共通認識があり「一流メーカーのものだから安心」とブランド力でモノが売れていましたが、昨今は合理主義的というか「ちゃんと自分に合うもの」「ちゃんと自分が気に入ったもの」を選ぶように消費者がシフトしていっています。

そして「体験型イベント」も、その「リアルな体験」の場として、企業の魅力度訴求につながる大事な接点として見直され、有効活用され始めているのか もしれません。「身近な人からのウェブを通じた口コミ情報」は、まさにこういう「体験型イベント」などを通じて発 生すると考えれば、この手法が重用され始めているのも納得ですね。

サンフランシスコで行われた「EXPERIENTIAL MARKETING SUMMIT 2015」でのマクドナルド社のセッションでは「見たことの20%しか人は覚えられないが、体験したことは80%覚えていられる」ということが語られまし た。まさに「しっかりとした体験で記憶に刻むということが、中長期のエンゲージメントには不可欠」ということなのではないかなと。

この「体験したことは80%覚えていられる」というのは記憶術の本などでよく出てくる記述ですね。じゃあ「リアルな体験」をしてもらってSNSで拡散してもらうようにすればどうすればいいんでしょうか。さらに「体験したことを忘れさせずに購入」にまで繋げるには…。

たとえば住宅販売の場合、今は「内覧会」「お家見学会」が多いと思います。これは体験ではなくて「見学」ですので記憶に残りにくいと思いますし、家の購入を考えている人は何件も何件も見て回るわけですから記憶が薄れてしまいます。
少しでも記憶にとどめてほしい+楽しい手法で集客しようと、内覧会にお祭り的な要素を入れることも多いと思います。「ヨーヨー釣り」とか「苔玉ワークショップ」とか。来られたお客様は体験したことですから「苔玉ワークショップ」のことは覚えているかも知れません。でも見て回っただけの肝心の「家」のことを記憶にとどめてもらえるかどうかは不明です。

となると…その肝心の「売りたい、記憶にとどめていて欲しい家そのもの」で、体験してもらわないといけないのかもしれません。畳の部屋で本気で昼寝タイム、キッチンでお料理教室、リビングでティータイム、ダイニングでお食事、ガーデンでプチピクニック、ガーデンの芝生で寝っ転がる、テラスでプチグランピング…。なんなら一泊してもらって「起きてから眠るまでの全ての生活を体験」というのも面白いかもしれません。実際に体験した人がSNSで発信することによって、その取り組みやイベントが注目されていきます。

最後は突飛な案になりましたが、消費者の動向はどんどん変わっていっていますのでPRの手法の一つに「体験型イベント」を検討してみてはいかがでしょうか。

出典:新明解「戦略PR」 #37相談2:今頃、体験型イベントが人気って?バブルに逆戻りっすか?